書いてみた



汗は引いていた。



だから、首に巻いていたタオルをポケットに詰め込んだ。



風が吹いて、火照った体を冷やしていった。



ハナミズキの揺れる音がする。



静寂にしみこむようなその音は、すぐに止んで。



僕はふと、見上げた。



頭上には大きく張った枝に、屋根みたいに葉が生い茂り、



隙間から見える空には太陽も月もなく、



星明りに木はその影を落としている。



それはあまりに頼りなく、静かで、僕の呼吸でさえ乱してしまいそうに思え、



僕は息を止めた。





・・・すぐに息したけど。



ごろんと寝転ぶと、ジャージが乾いた音を立てた。



寝てしまおうかな。



デジタル時計は午前六時を示している。



一時間も走ったのに。今日は早く起きすぎた。



あたりはしんとしている。まるで誰もいないみたいだ。



実際、この時間にはあんまり人は通らない。通勤の人もまれ。



だからこんなことだって出来る。



僕は立ち上がり、脱ぎ捨てていたコートを羽織ると、車のボンネットに寝転んだ。



ボンネットがベコンと音を立てた。



その音に思わず僕は飛び上がりそうになる。



この車のボンネットは真ん中がちょっと盛り上がっている。



道具箱を置き忘れたまま思い切り閉めた結果だ。



どうして置き忘れたのか、というかどうしてそんなところに道具箱を置いて作業していたのかは知らない。



まあ置き忘れたのが自分の頭でなくてよかった。



道具箱は鉄くずに進化を遂げていたから。





今度はゆっくりと寝転ぶ。ポコンという音ですんだ。



そうして空を見上げる。こっちのほうが枝が邪魔をしなくてよく見える。



・・・あれはオリオン座だろうな。見てすぐに分かった。



というかそれしか知らない。

左上の赤い星のベテルギウス、右下の青い星、リゲル。三つの星からなるベルト。



今度星座の神話でも読んでみるか、なんて思った。









とかいう風なものを書いてみようと思うんだ。



あんまり本気じゃないけど。