小説

モラトリアム

ハンドルを切る。 舟を漕いでる船頭みたいだ、とか思いながら、いつもより重いペダルをまわしていく。 スピードはそのままに体を傾けてインで攻め! ・・・なんて出来るはずも無くて、僕はのろのろとスピードを落としてのろのろと角を曲がった。 一人増える…

影と、文房具

「何やってんの」 僕の隣に友達が座ってきた。 「本読んでる」 「どんな?」 「こんな」 ブックカバーを外して表紙をほら、と見せた。 僕はショッピングモールの一角のベンチに座って本を読んでいた。 ここは平日・祝日問わずに賑わうところで、いつだって人…